1950年代。「TACTICS」という名の、一風変わったボードゲームが誕生します。
これは、現在でいうところのウォー・シミュレーションゲーム(以下・ウォーSLG)の原点にあたるゲームです。ウォーSLGとは、「ミニチュアの兵器をコマにした、
将棋やチェスのようなゲーム」のこと。戦場を模したボードに、小さな兵器のミニチュアなどを配置し、敵軍を打ち負かすことを目的とするゲームです。
じつは、これこそが、テレビゲームの源流のひとつです。「ユニット(兵器)の能力を数値化する(パラメータ化する)」という概念や、「ユニットが接触したら戦いになる」というルールは、ここで登場しているようです。現在のテレビゲームで、当然のように使われているルールのいくつかは、ここを起源とすると考えていいでしょう。
ウォーSLGは、オトナこそが楽しめるボードゲームとして、じわじわと人気を高めていきました。そして、その時点での最新兵器を忠実に再現したものや、歴史上の戦争をモチーフにしたものなど、さまざまなバリエーションが作られるようになり、静かなムーブメントを起こしていくのです。
1960年代の半ば。ウォーSLGに、大きな影響を与える社会現象が発生します。世界的ベストセラー「指輪物語」が、アメリカに上陸したのです。そこで描かれる、剣と魔法のファンタジー世界や、人間やエルフ、ホビットなどの複数の種族たちによる魅力的な物語は、アメリカの若者たちを強く刺激しました。さまざまなファンタジー物語が作られたのみならず、そのムーブメントは、ボードゲームの世界にも影響を与えることになるのです。
それは、不思議な化学現象を起こしました。ファンタジー世界を舞台にしたウォーSLGが作られただけではなく、まったく新しいタイプのボードゲームを誕生させてしまったのです。ウォーSLGのように、戦争の指揮官としてコマを動かすのではなく、プレイヤー自身がファンタジー世界の登場人物になり、その世界での冒険を楽しもう! というゲームが誕生したのです。
こうして誕生したのが、ロールプレイングゲーム――すなわちRole(=役割)をPlay(=演じる)する
Game(=ゲーム)です。諸説ありますが、一般的には、1974年に発売された『Dungeons&Dragons』が、その元祖だといわれています。以降、さまざまなバリエーションのものが作られ、RPGは進化・発展を遂げていくことになります。
当時のRPGとは、会話によって物語を進行させるゲームでした。ゲーム
マスターの問いかけに対し、プレイヤーが返答し、サイコロの出た目によって結果が変化し……といった手順で物語は進みます。そのため、日本では
テーブルトークRPGと呼ばれていました(欧米ではテーブルトップRPG、あるいは
ペンシル&
ペーパーRPGと呼ばれます)。
このゲーム、日本のゲーム愛好者にとって、かなり特殊な遊びだよなぁ、と思われがちです。わざわざ「みんなで集まる」必要がありますし、しかも「会話によって遊ぶ」といったあたりが、あまり一般的な遊びではないよなぁ、と感じさせる要因かもしれません。
しかし、それはまったくの見当違いなのです。歴史を考えれば一目瞭然。「モノポリー」が1930年代に作られていることからもわかるように、そこには、みんなで集まって「ボードゲームを遊ぶ」という文化がありました。だからこそ、むしろ「みんなが集まったときに楽しいもの」があるといいなぁ、「そこで会話を弾むような楽しいゲーム」があるといいなぁ、という欲求があり、それに応えるようにして、ウォーSLGや、RPGは誕生しているのです。RPGが、「みんなが集まって遊ぶ」「会話によって物語が進む」という
スタイルになったのは、むしろ当然の帰結なのですね。
話を戻しましょう。じわじわと人気を高めていったRPGですが、そこには欠点もありました。RPGでは、ゲームマスターと呼ばれる人間が、他の参加者(プレイヤー)のためにシナリオを用意し、ゲームを運営・管理することになります。つまり、優れたゲームマスターさえいれば、血湧き肉踊る物語を作り出すことが可能となり、半永久的に楽しめるのですが、その反面、優れたゲームマスターがいなければ、楽しさが半減してしまうという欠点を持っていたのです。
しかし、その欠点を補うかのように、時代は、強い追い風を吹かせました。時代は1970年代でした。すなわち、いままさに、
コンピュータが一般化しつつある時代だったのです。だったら、コンピュータにゲームマスターを任せてしまえばいい! そう考える人が出てきたのです。
こうして、ゲームセンターとはまったく違う源流を持つ、もうひとつのテレビゲームの歴史がスタートします。その第1号は、「
アドベンチャー」というゲームだったといわれています。
[この項、後日に続く]