2005年09月01日

PCゲームの誕生[その3]

 1970年代後半。とある研究所で、「ADVENTURE」というゲームが登場します。

 テキストによって状況が説明され、プレイヤーがそれに対応することによって、物語を進めていくゲームでした。いまでいうアドベンチャーゲームの原点です。というより、このゲームの名前が、そのままジャンル名になったと考えたほうがいいかもしれません。

 ボードゲームの歴史を追ってきたみなさんには、これがRPGの発展形であることが、すぐに理解できたと思います。「ゲームマスターの言葉によって世界が説明され、プレイヤーが返答することによって物語が進む」というシステムが、「コンピュータのテキスト表示によって世界が説明され、プレイヤーが応答することで物語が進む」というシステムへと、置き換えられているわけです。このゲームこそが、RPGにおけるゲームマスターの役目を、コンピュータに任せることにした、初のゲームでしょう。

 これは「個人で楽しむゲーム」ではありませんでした。いまでいうネットワーク対応です。いずれインターネットへと発展していくことになる、広域ネットワーク・システムの中に用意されました。多くの人が、ネットワークを介してゲームに接し、ネットワーク内で絶大な人気を獲得したといわれています。ゲームマスターが、複数のプレイヤーに物語を説明するのと同じことが、コンピュータ+ネットワークという環境下で、行われていたのです。

 当時、コンピュータは高価であり、貴重でもあり、個人が所有するようなものではありませんでした。コンピュータは、大学や研究所などに置かれていて、みんなが共有するものだったのです。「みんなで共有するもの」だったからこそ、「みんなで遊ぶ」というボードゲームの遺伝子を引き継いでいたRPGは、コンピュータとの親和性が高かった、と考えてもいいでしょう。

 その証拠に、21世紀になったいま、RPGは次々とオンライン化され、みんなでひとつの世界を楽しむようになっていますよね? そこでの交流を楽しむというスタイルへと発展していますよね? これは、なんら「新しい形」ではありません。いわば、先祖がえりです。RPGは、もともと「みんなで遊ぶ」「会話を楽しむ」という文化の上で誕生し、そういう場での「面白さのエッセンス」を脈々と受け継いでいるジャンルなのですから。



 話を戻しましょう。1970年代後半。安価な個人向けコンピュータ(パソコン)が普及します。1976年にはAPPLE社が設立され、翌1977年には、グラフィック描画能力のあるAPPLE IIを発売します。これ以降、テキストだけではなく、挿絵付きのアドベンチャーゲームが登場するようになります。1980年代になると、ゲームはよりグラフィカルになり、きれいに描かれた世界の中を、キャラクターが移動するようなゲームも登場します。

 パソコンゲームでは、グラフィックの強化は、「世界を、より詳しく説明するため」に活用されていきました。優れたグラフィックを利用することで、ゲーム内の世界を、より精緻に描写しようと進化していくのです。優れたゲームマスターが、優れた「会話」によって世界を説明するのと同じように、「より詳しく状況を説明するため」にこそ、コンピュータの性能上昇が活用されたのですね。パソコンゲームの進化の歴史とは、「世界を描写することを進化させる」歴史だといってもいいでしょう。

 じつは、これが、ゲームセンターを源流とするゲームと、パソコンゲームとの、最大の違いです。ゲームセンター源流のゲームでは、何かを成し遂げたときに、「凄いグラフィックを見せる」――といった形で、つまりグラフィックを「ご褒美」として機能させようとしました。一方、パソコンゲームでは、グラフィックは、世界を説明するためにこそ、使用したのです。グラフィックの活用法が、まるで違っているのですね。(じつは、この違いこそが、現在の「海外ゲーム」と「国産ゲーム」のテイストの違いに直結するのですが、それについては、別の項で説明します)。



 1980年代。ついに、本格RPGが、パソコンゲームとして登場します。1980年には「Ultima」が、1981年には「Wizardry」が登場し、ヒットシリーズへと成長していくのです(注:これは商業版ソフトの発売年。それ以前にも非商業ソフトとしては存在していたようです)。

 これらのコンピュータRPGはヒットを記録。もちろん日本でもプレイされるようになりました。数値化されたパラメーターの増減を楽しみつつ、物語を追っていくというゲームが、日本に飛び込んできました。これに影響を受けた人たちが出てきました。

 これにより、ついにパソコンゲームの「面白さのエッセンス」と、ゲームセンターを源流とするテレビゲームの「面白さのエッセンス」が、ファミコンというマシンの上で、激突することになるのです。

[この項、後日に続く]
posted by 野安 at 16:16| Comment(4) | TrackBack(0) | PCゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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