2005年08月31日

PCゲームの誕生[その2]

 1950年代。「TACTICS」という名の、一風変わったボードゲームが誕生します。

 これは、現在でいうところのウォー・シミュレーションゲーム(以下・ウォーSLG)の原点にあたるゲームです。ウォーSLGとは、「ミニチュアの兵器をコマにした、将棋やチェスのようなゲーム」のこと。戦場を模したボードに、小さな兵器のミニチュアなどを配置し、敵軍を打ち負かすことを目的とするゲームです。

 じつは、これこそが、テレビゲームの源流のひとつです。「ユニット(兵器)の能力を数値化する(パラメータ化する)」という概念や、「ユニットが接触したら戦いになる」というルールは、ここで登場しているようです。現在のテレビゲームで、当然のように使われているルールのいくつかは、ここを起源とすると考えていいでしょう。

 ウォーSLGは、オトナこそが楽しめるボードゲームとして、じわじわと人気を高めていきました。そして、その時点での最新兵器を忠実に再現したものや、歴史上の戦争をモチーフにしたものなど、さまざまなバリエーションが作られるようになり、静かなムーブメントを起こしていくのです。



 1960年代の半ば。ウォーSLGに、大きな影響を与える社会現象が発生します。世界的ベストセラー「指輪物語」が、アメリカに上陸したのです。そこで描かれる、剣と魔法のファンタジー世界や、人間やエルフ、ホビットなどの複数の種族たちによる魅力的な物語は、アメリカの若者たちを強く刺激しました。さまざまなファンタジー物語が作られたのみならず、そのムーブメントは、ボードゲームの世界にも影響を与えることになるのです。
 
 それは、不思議な化学現象を起こしました。ファンタジー世界を舞台にしたウォーSLGが作られただけではなく、まったく新しいタイプのボードゲームを誕生させてしまったのです。ウォーSLGのように、戦争の指揮官としてコマを動かすのではなく、プレイヤー自身がファンタジー世界の登場人物になり、その世界での冒険を楽しもう! というゲームが誕生したのです。

 こうして誕生したのが、ロールプレイングゲーム――すなわちRole(=役割)をPlay(=演じる)するGame(=ゲーム)です。諸説ありますが、一般的には、1974年に発売された『Dungeons&Dragons』が、その元祖だといわれています。以降、さまざまなバリエーションのものが作られ、RPGは進化・発展を遂げていくことになります。

 当時のRPGとは、会話によって物語を進行させるゲームでした。ゲームマスターの問いかけに対し、プレイヤーが返答し、サイコロの出た目によって結果が変化し……といった手順で物語は進みます。そのため、日本ではテーブルトークRPGと呼ばれていました(欧米ではテーブルトップRPG、あるいはペンシル&ペーパーRPGと呼ばれます)。

 このゲーム、日本のゲーム愛好者にとって、かなり特殊な遊びだよなぁ、と思われがちです。わざわざ「みんなで集まる」必要がありますし、しかも「会話によって遊ぶ」といったあたりが、あまり一般的な遊びではないよなぁ、と感じさせる要因かもしれません。

 しかし、それはまったくの見当違いなのです。歴史を考えれば一目瞭然。「モノポリー」が1930年代に作られていることからもわかるように、そこには、みんなで集まって「ボードゲームを遊ぶ」という文化がありました。だからこそ、むしろ「みんなが集まったときに楽しいもの」があるといいなぁ、「そこで会話を弾むような楽しいゲーム」があるといいなぁ、という欲求があり、それに応えるようにして、ウォーSLGや、RPGは誕生しているのです。RPGが、「みんなが集まって遊ぶ」「会話によって物語が進む」というスタイルになったのは、むしろ当然の帰結なのですね。



 話を戻しましょう。じわじわと人気を高めていったRPGですが、そこには欠点もありました。RPGでは、ゲームマスターと呼ばれる人間が、他の参加者(プレイヤー)のためにシナリオを用意し、ゲームを運営・管理することになります。つまり、優れたゲームマスターさえいれば、血湧き肉踊る物語を作り出すことが可能となり、半永久的に楽しめるのですが、その反面、優れたゲームマスターがいなければ、楽しさが半減してしまうという欠点を持っていたのです。

 しかし、その欠点を補うかのように、時代は、強い追い風を吹かせました。時代は1970年代でした。すなわち、いままさに、コンピュータが一般化しつつある時代だったのです。だったら、コンピュータにゲームマスターを任せてしまえばいい! そう考える人が出てきたのです。

 こうして、ゲームセンターとはまったく違う源流を持つ、もうひとつのテレビゲームの歴史がスタートします。その第1号は、「アドベンチャー」というゲームだったといわれています。

[この項、後日に続く]
posted by 野安 at 18:26| Comment(3) | TrackBack(2) | PCゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
補足です。

当時のボードゲームに関しては、いまひとつデータを調べ切れない部分があります。
そのため、文中に事実誤認があるかもしれません。

お気づきになった方は、ぜひ指摘してください。よろしくおねがいします。
Posted by 野安 at 2005年08月31日 18:30
日本でもマスターを必要とする、芸者遊びなんてゲームがありますが
こういう流にならなかったのは、なぜだろうか?

少々気になるところです。

いや、芸者遊びの性欲的な部分が日本的なテレビゲームの起源かもしれませんが。。
だとすると、たしかにオンラインゲームは日本で流行りにくい気がしますね。
Posted by at 2005年09月01日 01:13
ボードゲームのデータの不足箇所とはどのような事でしょうか?

例えばD&Dの元になったのは、タクテクス系のウォーゲームとは系統が違うアクチュアルゲーム(人形と物差しでプレイする)のようですが、野安様がわかって省略されたのか、データがなかったかの判断がこれだけではつきませんので…

半年以上前のエントリーですし、もう解決済みでしたらコメント欄汚して済みません。
Posted by 劣 at 2006年02月11日 07:23
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック

【WIN】スターウォーズ:エンパイアアット
Excerpt: エンパイア・アット・ウォーの拡張版で、前作が面白かったので、買いました。期待通り面白いです。ルーク、ヨーダ、スーパー・スター・デストロイヤーなど、新しいユニットも使用可能になり、スターウォーズファンな..
Weblog: ゲーム(PC)がいっぱい
Tracked: 2007-09-10 16:45

テクノブレインぼくは航空管制官 2 セント
Excerpt: このシリーズも相当出ていますが、あまり目新しさは無くなってきた様な気もする。っていうか難しくてクリアできないよ・・・・・ 同級生2 恋愛シミュレーションADV アダルトPCゲーム・ 外国為替取引シミュ..
Weblog: ゲーム(PC)がいっぱい
Tracked: 2007-09-11 16:23
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。